健康住宅人気のひみつ


それはまさに"カルチャーショック"でした。
平成9年の夏。おもしろい家づくりをしている家があるから行ってみないかと友人に誘われ、何気なく同行させてもらいました。
若い建築家が設計した住宅だという話でしたので、デザイン性を重視した雑誌によく出てくるような洒落たお宅かな?などと思って伺ったのですが・・・。
福岡の夏は、コンクリートとアスファルトで埋め尽くされた広大なビル群の影響だと思いますが、頭の上から照りつける太陽が、足元から立ちのぼる熱気とぶつかり、まるで東南アジアのような気候です。
そんな息の詰まるような真夏のある日、汗をかきながら福岡市内のとある一軒家に連れていかれました。外から見た感じでは、それほど特徴ある建物でもなく、ごく普通の一軒家のように思えました。
ところが、中に入ってみると、まるで地下の洞窟のような感覚で、空気がヒンヤリとしていて「あれっ?」という感じでした。とにかく気持ちが良かったのです。それまで感じたことのない感覚(心地よさ)に驚き、事情が理解できず、思わず友人に笑いかけたことを覚えています。
最新式の特別なエアコンの作用で、空気の状態がコントロールされているのかな?などと思いを巡らせていると、そんな私の気持ちを見透かしたかのように、そのお宅の奥様はにこやかに、「エアコンは今、スイッチが切れている状態ですよ。エアコンがなくても屋外の熱と湿気をうまく遮断すれば、家の中は夏でもこんなにヒンヤリするんです・・・」
その家に住む人が、ご自分の家の性能の部分を語ってくれる、という経験も新鮮でしたが、なにより、その奥様の満面に笑みをたたえた嬉しそうな表情が忘れられません。
当時、住宅後進地域である九州では、住宅会社の営業マンは、「施主の機嫌が良いのは入居(引越し)するまでだから、紹介は完成した住宅に入居する前に受けないといけない。入居した後はクレーム処理に追われて、新規客のご紹介なんてもらえないからね・・・」
「家を建てるのなら、この程度で我慢するのは常識だ。営業マンは、お客様にそれを教えてあげなければいけない・・・」
「ボランティアじゃないんだし、企業が生き残っていくには仕方のないことなんだ・・・」
というような教育を受けるのが当り前でした。
そんな時代に、入居して一年以上経過した家の奥様が自慢げに、そして私の驚きの表情を楽しそうにのぞき込む、などという経験自体が"驚き"でした。
今から十年前のことです。これが、私の「外断熱工法」との出会いでした。
後で分かったのですが、このお宅は先進的で勉強好きな若い設計士が、当時「外断熱」という聞き慣れない概念を実験的に採用して施工させた、性能の高い住宅だったのです。
確かにエアコンは待機状態で、家の中の温度は外気温より少し低い程度だったのですが、室内の空気がほどよく乾燥していて体感温度が低く、肌がさらさらで、あんな感覚を経験したのは本当に初めてのことでした。
「心地よい・・・」という単語が「すっ」と胸をよぎりました。
奥様は、この家にすっかり満足していて、このシステムで家を建てたことがいかにラッキーだったかを本当に嬉しそうに楽しそうに、そして自慢げに、
「よそ様のお宅とは、まるで違うんですよ」と話してくれました。
実は、この時期、私はまさに新しい住宅会社を設立し、その方向性を模索していた時だったのです。
神様から(あなた、これをおやりなさい・・・)と勧められたようなものです。
「あんな家を私の会社でつくりたい。」そして、「あんなふうにお客様に喜ばれたい。」
そんな思いが大きなエネルギーとなって、その日から「外断熱工法」への取り組みが始まりました。
(「性能の良い外断熱の本」2007年4月発行・より)